第1回 人材育成の現状

執筆:伊藤 弘子(いとう ひろこ) 公開:



どんなに優秀なマネジャーであっても、一人だけで成果を上げることは困難な時代です。

ましてや、組織においては、一人のマネジャーがどんなに優秀であったとしても、人を育てることができないようでは困ってしまいます。なぜなら、優秀なマネジャーがいつまでも先頭に立っていられないからです。組織が永続し発展していくためには、次に続く人材を確保し育てる仕組みが必要になります。

 

『人材を育てる力=組織の力』と言い切ってもいいくらいではないかとすら思います。

かつては、日本のどの企業でも人材育成に力を注ぎ、4月の入社式を終えると、新人研修、そして新人フォローアップ研修、さらに熱心な組織だと、新人を受け容れるためのOJTリーダー研修、その後は、中堅社員研修、主任研修、係長研修、課長研修と階層での研修が整備されています。また、それぞれ部門毎に目的別と呼ばれる研修があり、たとえば営業であれば、営業パーソンのためのアプローチからクロージングまでのセールスの基礎研修、さらに断られたときの対応を身につける応酬話法や断られることへの耐性をつけさせる応用研修、そして顧客の問題解決能力を磨くソリューションセールス研修など、レベルに応じた研修を組んで実施していたものです。

 

今でも研修体系を充実させている組織はたくさんあると思いますが、その一方で、現場での育成が不足しているような感触を持ちます。

 

たしかに、マネジャーの仕事量が増えていたり、解決しなければならない問題が従来よりもより専門性が求められていたり、複雑化しているということもあると思います。そのため、部下と直接接する時間的余裕がないということも理解できます。また、時短の流れで、遅くまで働いて、さらに勤務時間外にミーティングを行うというのもはばかられる風潮になっています。

 

こうした背景からか、マネジャーと部下の接する頻度は昔と比べると格段に減っているようです。

 

しかし、反面で一人一台の携帯保有、中にはパソコンも一人ずつ持っているという環境から、従来以上に双方での連絡は格段にとりやすくなっています。

 

このような環境に対して、マネジメントのあり方が、従来どうりでやろうとしているところに、そもそもの問題があるように思われます。

(以下、続く)



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