第2回 人材育成・部下育成を怠ると…

執筆:伊藤 弘子(いとう ひろこ) 公開:



今は管理者の業務量が以前とは比べ物にならないくらい増えていて、OJTに時間を割いている余裕がない、という声をよくお聞きすることがあります。

ですが、本当にそうでしょうか。

もしかしたら、部下育成・人材育成を後回しにしているから、いつまでも忙しい状況から抜け出せないでいるのではないかと思います。

「そんなことを言っても、すぐに人は育たたない。部門管理者としては、目の前にある目標を死守しなければならないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。しかし、たとえ一時的に売り上げダウンが発生したとしても、人材育成を後回しにすると、結局、そのツケを取り続けなくてはならなくなるのも事実です。

そうであれば、長期的に安定した職場運営を行い、目標達成ができる基盤を作ることがまず先決ではないでしょうか。

その基盤をつくるのは、だれかと問えば、目の前にある数字ではなく、部下です。

数字が目標を達成するのではなく、部下が目標を達成してくれるのです。

短期的な目先のことばかりを優先して動いていたのでは、いつまでたっても人材育成が十分に行えないでしょう。

長期的な視点に立てば、人材育成に力を注ぐことは必要であるとわかることです。

シンプルに考えて、まず目の前の人材を育てて基盤を安定させる、これが大切です。

それでも、多くの組織で人材育成が後回しにされています。その背景には、人材育成に対して苦手意識のある管理者が多いのではないかと思うこともあります。

 

かつては、プレイヤーとして優秀な人が、マネジャーになって「俺の背中を見てついてこい的なマネジメント」である程度の成果を上げることができました。それは、今ほど不況でもなく、市場も飽和状態になかったため、作り手・売り手優先的な発想で動いて成果を上げることができる環境にあったといえます。また、部下の側も、初めて就職した会社に一生勤務し続けることが一般的だったために、他と比べることもなく、会社とはそのようなものだろうという感覚で受け止めることができていたと思います。

ところが、現在は、過去のやり方だけでは簡単に成果が上げられなくなってきています。たとえば、買い手の購買経験が増えたり、同じような製品やサービスを扱うところが増えるに伴い差別化のための付加サービスや価格の引き下げなどがあることで、売り手に対する要求が高くなっています。また、インターネットの普及により、競合先は国際的になり、さらに競争優位性を保って成果を上げることが困難になっています。このような背景から、従来式の売り手優先の発想ではなかなか成果が簡単に上げられなくなっています。つまり戦略や戦術を明確に部下に伝えて、考えて動くということが一層大切になります。

一方で、若手社員は高学歴になっているため、納得して動きたいという欲求がより顕著です。言い換えると、納得できないことはたとえ上司の命令であってもやりたくない、という発想に立つ人が増えています。さらに、一生同じ会社で働き続けるという意識も低下しているため、かつてのように、多少のことは我慢して、という意識も低くなっています。特に、様々な会社を転職してきている人たちにとっては、いろんな会社のマネジャーを見てきているため、少しでも納得できないと簡単に気持ちが離れてしまう傾向も見られます。

 

と、ここまで述べてくると、現代の部下育成がいかに困難かという気分に陥ってしまうかもしれませんが、実際に部下育成に成功して成果を上げているマネジャーはシンプルなことを実践されています。

次回は、部下育成で成果を上げているマネジャーがどのようなことを実践しているかをお伝えします。



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