第6回 腹を割って話す

執筆:伊藤 弘子(いとう ひろこ) 公開:



 あなたがリーダーやマネジャーであるとしたら、どの程度、部下やメンバーと腹を割って話すことができていますか。私自身が知るところでは、ほとんどの人が3割程度しか腹を割って話せていないのではないかと思います。

 

腹を割って話すというのは本音で話すことです。これは日本的な表現ですが、昔から大切なことはおなかで考えると思っていたので、このような表現になっています。さらに、奈良の大仏などの大きな仏像だと、お腹のあたりに大切な経典を収めているそうです。

 

一般的には、腹を割って話すよりも、腹に一物を持って話すことの方が多かったり、またはそうした接点を持つ時間すら避けてしまっていませんか。

 

たしかに現代は忙しいため、ゆっくり話をする時間がとれないというのも事実かもしれません。

ところで、ほんとうに時間がとれないのでしょうか。

案外、優先順位が低くなっているだけで、他のことには時間が十分すぎるくらい割り当てられているということはないでしょうか。

人間は無意識に避けたいことには時間の優先順位を下げてしまって、氣づくと時間が足りないと錯覚していることがあります。

あえて優先順位を上げて、腹を割って話す時間を確保していくと、お互いの誤解や懸念が解消されて、スムーズに進むことが増えます。また、言いにくいことを腹を割って話すことで、劇的な部下の変化を目の当たりにすることもあります。

『ジョハリの窓』にも示されますが、こちらはあきらかに認識していることであっても、当の本人は全く氣づいていないことは往々にしてあります。思い切って、伝えてみると、相手は、それは失礼しましたとばかりに行動を変えるキッカケになることがあります。

このときに、大切になるのは、上手な伝え方でしょう。

相手の人格を丸ごと否定するような伝え方をすれば、誰だって聞く耳が持てなくなります。または、相手に対して一方的に感情をぶつけてしまったら、パワーハラスメントで訴えられかねません。

あくまでも相手の人間性や人格に対してではなく、行動や言動について、もしかしたら、氣づいていないかもしれないけれど、私にはこうみえますよ、とだけ伝えていくことが肝心です。

そして、それを誠意をもって行うこと。あくまでも上司として、ともに働く仲間として、あなたに氣づいてもらってもっとよくなってほしいから伝えているという姿勢が大切です。同時に、自分自信も完璧ではないということを理解したうえで、あえてあなたとの関係をよくしていくために、伝えさせていただきます、という姿勢が重要でしょう。自分の中に抱えている一番大切なものを出すという姿勢が大切で、それがうまくいけば、相手にとっては経典を受け取ったかのようなお宝になります。

 

続く



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