60pic_2_1438931818.jpg

常識8.営業日報は、上司に見せる

執筆:藤井 正隆(ふじい まさたか) 公開:



日々の営業日報は、上司が見るのが常識です。面談件数、面談内容、その他、上司は、部下の量と質について管理します。例えば、A営業所の営業所長は、自分の営業所のメンバーの日報を見ながら、振り返りミーティングを行ったり、個別に面談をしてアドバイスをします。大きな会社では、営業1課、営業2課というように、課毎にマネジメントが行われます。つまり、あくまでも営業マネジャーは、自分の受け持ちの課、ユニットの売上・利益目標を立て、目標達成のために、育成指導を行うのが常識です。

 

こうしたマネジメントの基本的な考え方になっているのは、「命令系統の一元化」という考え方です。隣の課の課長から、「忙しいから手伝ってくれよ」と言われた際、どうしたらいいでしょうか?少し迷うことがあるかもしれません。

それは、命令系統の一元化の原則である、「一人の部下に対して直接、仕事の指示命令を下せるのは,直属の上司一人に限る」といった考え方によるものです。これは、ある一定規模以上の組織が、円滑に行っていくための約束事であり、常識になっています。特に、お役所に、代表される官僚制組織では、この原則が厳格に守られています。隣の課の課長からの依頼については、自分勝手な判断で動くのではなく、直属の上司に事態を報告したうえで,上司の指示の下で行動すべきとされています。直属上司が「隣の課も大変だから、手伝ってあげなさい」と言えば、協力することになります。しかし、いずれにしても、直属上司の判断を仰ぎ、そのうえで行動するのが筋になっています。

なぜ、このような約束事を定めているかの一つの理由は、職場を構成する社員のレベルは様々だからです。ものごとを自分で判断できる人もいれば、新入社員のように、経験がない人もいるからです。もし、経験が浅い社員に自分勝手な判断で動かれたら,上司は部下の行動を把握・管理できず、場合によっては、組織の混乱をきたします。こうした混乱を防ぐために、組織の中に指示命令系統を設け、そのルートを通して行動するという約束事となっています。

 

このように、命令系統の一元化原則があるために、営業日報などの報告は、直属の上司に行います。他の課の営業マネジャーが見ても、詳しい内容は分かりません。そこで、限られた断片的な情報の中で、他の課の社員にアドバイスをしたとします。時には、有益なこともあるでしょうが、場合によっては、直属の上司とアドバイスの内容が異なれば、ツーボス状態になり、どちらのアドバイスを受けたらいいのか迷うことになるかもしれません。

 

90年間成長し黒字経営を続けている愛媛県八幡浜市に株式会社あわしま堂という和洋菓子メーカーがあります。売上高125.4億円(2016年度)従業員:800名(2016年3月現在)

で、和洋菓子量販店販売日本一で、年間約500種類の和洋菓子を製造。年間約200種類の新商品開発を次々と発表するのが特徴です。同社の木綱 憲和代表取締役会長 に、90年以上成長している秘訣をお聞きしましたが、3点、ご紹介したいと思います。

 

まず、経営理念と行動指針の徹底です。食品偽装とは無縁の会社で、日頃より生産工場などを巡回し、改善点やデータを現場にフィードバックし、全ての土台となる7S活動を徹底し、品質管理と衛生管理を行っています。

通常は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)ですが、

あわしま堂では、食品会社らしく、清浄・殺菌を入れて、7S(整理・整頓・清掃・清浄・殺菌・清潔・躾)として、徹底しています。品質管理と衛生管理のこだわりは、自社工場だけでなく材料の仕入先の工場にまで及びです。材料が入ってくる前から、品質保証の取り組みが始まり、お客さまに最終的に商品が渡る販売店へも、7S活動を推進しています。

 

<経営理念>

美味しさつくり 笑顔つくり

 

<行動指針>

私たちはお客様に笑顔で喜んで頂ける、美味しくて感動のあるお菓子をお届けします。

私たちはともに働く人々の人格・個性を尊重し、安全で働きやすく、かつ豊かさとゆとりが実感できる職場環境をつくります。

私たちはうそをつかず、公正な態度で行動し、地域社会や環境の改善に貢献します。

 

特に、下線を引いたところは、絶対に入れてほしいと木綱会長が拘ったところです。この拘りが、セブンイレブンやイオン、ヤオコーといった大手企業などと、適正価格で取引ができている理由です。私自身も、某大手コンビニエンス本社で、ビジョン作成や業務改革などのお手伝いの経験があり、バイヤーが食品会社の提案を受ける商談にも立ち会ったことがありますが、さすがに、厳しい納品条件で価格交渉もハードだと思います。そうした中で、値引きをしないで、GMS、コンビニエンスに納品できているということは、その商品の信頼性がいかに高いかが分かります。

さらに、あわしま堂では、竹で造ったおしゃれな独自の什器を、各店舗に設置してもらい、そこに、同社の商品が陳列されています。

 

2つ目は、社内イントラネットです。実際に、社内のネットワークに入り、その仕組みを見せていただきましたが、経営情報を始め、人事考課の個人結果以外は、全てを社員が見ることができます。例えば、月次の売上利益、各取引先及び商品毎の昨年度比較など、あらゆる企業経営に関するデータなど、通常、社員にオープンにされていないような上場まで確認できます。

今回のテーマで書いた営業日報も同じです。他の営業マネジャーだけでなく、工場部門、開発部門、総務部門の方も、クリック一つで、誰がどこで、どのような商談が行われたかが分かります。そして、逆に、何かあれば、もっと、こうしたらいいよ・・とアドバイスが入ります。

 

一方、イントラネットが機能するためには、運営のガイドラインをしっかり設定することが重要です。

営業SFAを導入している会社も多いと思いますが、必ずしもうまくいっていません。

実際に、私が直接、確認した某500名程のソフトウエアパッケージ販売会社では、まさに、運用が悪いために、形骸化しているどころか、生産性を著しく下げていました。

理由は、営業の見込みや商談内容が、多くの人が見るようになったことで、経営トップからの直接の指示が入るようになったのです。特に、大型案件が見込みに上がると、社長から営業担当者に、直接、「あの案件は、どうなった!もっとこうしたらいい・・」と営業マネジャーを飛ばして、指示が行ったために、営業担当者は、大型案件をあえて隠すようになったのです。そのため、多大な投資をした営業SFAは、全く活用されなくなってしまいました。

 

しかし、これは、運用の問題で解決できることです。そして、逆に、全てのオープンにすることでメリットも多々あります。

1. 経営者と社員の間に信頼感が高まる。

2. 全員に経営者意識が芽生え、考えるようになる。

3. 各職場で起こっていることがわかるので、助け合いが起こるなどです。

 

何度か、訪問した広島県に本社を置くメガネ21も、同様に全てをオープンにしています。

ホームページには、社長の給料から、お客様には、一商品当たりの粗利までオープンにしている会社ですが、あわしま堂同様に、上記の3つのようなメリットを確認しました。

 

イントラネット、インターネットが普及する前に、出来上がったマネジメントの考え方は、まさに、問い直すことの必要性を感じます。



さらに知りたい方(コンサルタントに連絡をとる)