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第10回「残業ゼロ」へのヒント#1 「ムダな残業」はなぜ起きる?

執筆:松島 紀三男(まつしま きみお) 公開:2017年2月20日(月)

 

 私は「残業ゼロ学」の体系化を目指していますが、ここでは気軽にできる残業削減のヒントをご紹介していこうと思います。職場で手軽にできる残業減らしのコツについて、これから回を追ってお話ししましょう。

 

 

1.「ムダ」な残業「減らせる」残業「必要」な残業

 

「残業」の削減可能性を、その困難度から見て類型化すると、以下のように区分できます。

 

1)ムダな残業

業務上必要ないにもかかわらず発生している残業

仕事がないのに残業している、あるいは意識的、無意識的な遅滞で発生している残業

例)付き合い残業、残業の慣行化、生活残業 等。

 

2)減らせる残業

業務上必要だが、業務自体のムダや非効率な仕事の進め方で発生している残業

価値を生まない、あるいは生産性の低い仕事で発生している残業

例)ムダな書類づくり、ムダな会議、手作業、ICT化、自動化の遅れ 等。

 

3)必要な残業

事業や組織活動の根幹に関わる不可欠の業務で発生している残業

これ以上の効率化が難しく削減が困難な残業(※ただしイノベーションで可能な場合あり)

例)人手不足による長時間労働、繁忙期の残業

 

残業削減の困難度は3)→2)→1)となります。

逆に言うと、1)→2)→3)の巡で減らしやすいということですね。

残業削減の基本戦略としては、1)→2)→3)の巡で着手するとよいでしょう。

そこで、今回はまず1)の「ムダな残業」に焦点を当てることにしましょう。

 

2.「残業」が慣行として定着していませんか?

 

組織内で繰り返し同じ行動をとっていると、しだいに慣行として定着していきます。いったん慣行として定着化した集団の行動は硬直化したパターンとなり人びとの行動を規制するようになります。これを「規範」といいます。

「規範」は良い方向にも悪い方向にも働く可能性があります。すなわち「良き伝統」にも「悪しき慣例」にもなり得るということです。

「規範」は時間の経過と共に強化され、その慣行が状況に合わなくなり、変革が必要な場合でも容易に変えることができません。

このように両刃の剣である「規範」ですが、「残業」も慣行として定着すると「残業規範」として長期間、広範囲に組織を規制することとなるのです。

「残業」が規範として定着すると必要な業務量、純粋に必要な労働時間に関係なく「残業」を前提とした労働時間の前例に固定化していきます。すなわち、下記の状態が定着します。

 

総労働時間(残業含む)≧必要な労働時間

 

上の式の差分が「ムダな残業」ということになりますね。

 

 

3.アンカリング、習慣、同調圧力が「残業」規範をつくる

 

それではなぜ、「残業」が「規範」として定着するのでしょうか。それには下記の3つの要因が働いていると考えられます。

 

1)アンカリング

先行する数値が後の判断に影響を及ぼすこと。例えば新設の組織で初日に「とりあえず」「たまたま」業務を終了した時刻でも、翌日以降の勤務時間の判断基準として影響力を持つなど。

当初は暫定的だった残業も、日数を重ねるにつれ、アンカーとしての権威は強くなり、残業の規範は強化されていきます。

 

2)習慣

個人の習慣として定着化した行動は変化に対して強い抵抗力を持つようになります。いったん習慣として定着化すると、個人の感情と結びついて、それを変えることには強い不安や逡巡を覚えるようになるからです。よいことを習慣して定着させるのは自己成長や健康管理、人生の充実にも極めて効果的ですが「残業」が習慣化するのは考えものですね。

個人の習慣として定着化した残業は、集団の統一行動としての「残業規範」形成、維持の原動力となります。

 

3)同調圧力

習慣は個人の内なる変革の阻害要因となりますが、同調圧力は集団の変革阻害要因となります。集団内に「同調圧力」が働くことにより「残業規範」から逸脱することへの圧力が集団の構成員に働きます。

日本の社会、組織は、特に「同調圧力」が強いと言われていますが、「残業」への「同調圧力」が日本の産業社会全般に影響力を及ぼしていると考えられます。

 

4.規範による「残業」は本来不必要で、減らしやすい残業

 

このように見てくると「規範」となった「残業」削減は非常に強い抵抗力を持つ、やっかいな課題のように思えます。確かに「残業規範」の変革には一定の困難が伴うのは事実でしょうが「残業」発生の主因が「規範」であれば、それほど悪性とはいえません。

なぜなら「規範」が主因ということは、1.で述べた通り、本来「残業」が必要ないにもかかわらず、職場にいる「ムダな残業」であり、「残業」削減によって業務の成果、質が損なわれるリスクが少ないからです。

それでは、どのようにして「残業規範」をなくし「残業」を減らすか。この点について、次回述べることとします。

さらに知りたい方(コンサルタントに連絡をとる)