八方よしを実現する経営
当社は、八方よしを実現する会社を「いい会社」と定義します。
いい会社とは、大きな会社と同意語だった時代もあります。
例えば、学校を出て、有名大企業に入社すると、「いい会社に入ったね・・」と、言われました。
これは、大企業に入れば、安定していて将来が保証されると思われていたからです。
また、大企業の方が中小企業よりもお給料が多くもらえるといった認識があったからです。
しかし、1990年初めのバブル崩壊以降、売上が上がらないために、成果給が導入され、非正規社員雇用の比率を多くするなど、総人件費が抑えられました。さらにリストラが当り前に行われるようになり、リストラをした会社の株価が上がるといったことが発生しました。
つまり、私たちは、大きな会社に入っても、必ずしも将来が保証されないことを学習しました。そのために、大きな会社イコールいい会社とは言えないといったことは、多くの人が感じていることではないかと思います。
現在、ブラック企業、ホワイト企業といった言葉が、頻繁に使われています。
今まで通りに、売上利益を追いかけていたら、心無い企業が、サービス残業、パワハラ等、社員に劣悪な環境での労働を強いるブラック企業化するのは残念ですが予想できます。
一方、ブラック企業の対義語として、ホワイト企業といった言葉も言われはじめました。社員の待遇や福利厚生などが充実し、数ある企業の中でも働きやすさにおいて特に優れている企業、という意味合いで使われています。
しかし、ホワイト企業ランキングには、取引先に厳しい企業が含まれています。自社は、ホワイトであったとしても、そのしわ寄せを取引先に押し付けるような企業は、「いい会社」と言えるでしょうか?
誰かに犠牲を強いる企業は、「いい会社」とは言えません。誰かとは、「社員とその家族」「取引先とその家族」「お客様」「地域・社会」等です。
いくら売上利益が高く成長していたとしても、これら関係者の犠牲の上であるとすれば、欺瞞であると言わざるを得ません。
では、「いい会社」とは、どんな企業でしょうか?
よく、三方良し「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」と言われます。
企業経営になるとステークホルダー(利害関係者)は、以下の8人です。
1
社員
2
社員の家族
3
社外社員(取引先)
4
社外社員の家族
5
お客様
6
地域・社会・自然・環境
7
経営者
8
株主
持続的で豊かな社会の実現を目指し、会社が関わるすべてのステークホルダー(広義の利害関係者)が幸せになれるように
経営資源の配分を行う会社のことです。
つまり、八方よしの経営を実現している企業が、「いい会社」なのです。
いい会社の特徴
売上利益が上がると、社員をはじめとする関係に多く配分されて、経済的に豊かになります。そのため、売上利益を上げることは重要です。
また、継続的に売上利益が上がるということは、価値あるものをお客様に提供している証でもあります。しかし、売上利益が上がり、企業規模の成長を目的にしたらどうなるでしょう。時として、社員の残業が多くなる、取引先に厳しい条件を突きつけるといったように、関係者が不幸になってしまう可能性も出てきます。
つまり売上利益は、関係者を幸せにするための手段、或いは結果でなければなりません。
しかし、売上利益を目的にしてしまっているといった本末転倒な企業もあります。
何のために、売上利益を上げることが重要なのかをしっかり理解しているのがいい会社の特徴です。
いい会社は、急成長を望みません。むしろ、日本樹木が夏と冬を繰り返して、年輪をつくるように、ゆっくりですが確実に安定成長します。
まず、成長とは何かですが、決して売上利益だけが成長とは限りません。
会社のイメージが良くなった。お客様が増えた。作っている製品の品質が良くなった。といったことも成長です。
急激な成長は、どこかにしわ寄せが行くことになりかねません。成長の基準は、社員の成長と歩調を合わせることです。社員の成長よりも早い成長は、どこかに無理が生じ、誰かを不幸にする可能性が高くなります。
もちろんストレッチした目標が必ずしも悪いわけではありません。
大きな変革を世の中にびっくりするような価値を生み出すような原動力になることもあるでしょう。
しかし、同じビジネスモデルでアクセルを吹かすような成長は、企業の実力以上に背伸びをしている経営です。
いい会社は、特許が取れた!画期的な新商品ができた!といったことがない限り、カメのようにゆっくりとした成長を目指します。
業績がいい会社の社員は、必ずしもモチベーションが高いわけではありません。
環境がいい、時流に乗っているといった外的な要因や、社員の給料を安く抑えているといったことでも高い利益を出すことは可能です。一方、社員のモチベーションが高い企業は、安定的に高いパフォーマンスを上げることができます。
なぜなら、お客様がビックリするような製品を開発するのも、感動するサービスを提供するのも社員だからです。自社が社員のモチベーションが高い企業は、外的要因で一時的に業績が落ち込んだとしても必ず回復します。
地域を大事にしているので地域の人達に好かれています。意外と知られていません。
いい会社は、利害関係者の幸せの追求を第一に考えています。
そのため極端な事業拡大や利益拡大を望まないために、傍から見れば地味な会社が多いのが特徴です。
企業市民という言葉があります。企業は利益を追求する以前に良き市民であるべきであるという考え方です。つまり、社会において企業は権利を行使できることと同時に義務も負うべきだということを自覚し行動しています。
価格競争は、誰も幸せにしません。価格競争するためには、協力会社に無理を強いたり、社員の報酬を抑えるといったことでないと実現しません。価格競争できるのは、数多くつくることでコストダウンができる一部の大企業だけです。
中小企業がこうした大企業との同じ価格競争を行うこうことは自殺行為です。
いい会社は、オンリーワン商品サービスを持っていたり、優れたビジネスモデルを構築している等、価格以外の高い価値を持っています。
いい会社は国の三大問題を解決する
日本は、成熟社会から少子高齢化、人口減少時代に突入し、国内需要が落ち込むことを避けることは難しい状況です。
国は、1,000兆円を超える借金をかかえ、国民1人当たりの借金は、1,000万に迫る状況になっています。
現在、弊社イマージョンが事務局として活動している「人を大切にする経営学会」では、「いい会社」が増えることで、国の三大問題を解決するという仮説に基づき、「いい会社」の調査研究を継続的に行っています。
この仮説は人を大切にする経営学会会長である坂本光司先生(元法政大学大学院教授)が40年間で約8000社を回って確認したものです。
さらに、定量・定性での調査により、証明することにチャレンジしています。
1
「いい会社」は、黒字で税金を払っているので膨れ上がった国の借金が減る。
「いい会社」は不況の中でも常に業績を伸ばし、売上も利益も増やしています。中小企業の7割が赤字と言われている中、それらの「いい会社は」しっかりと利益を出し、税金を納めています。
「いい会社」が増えることで国の税収も増加し、増え続けている国の借金に歯止めをかけることができます。
2
「いい会社」では、社内結婚が多く子供の数も多いので、少子化問題の改善に繋がる。
「いい会社」は、安定的に生活できる報酬体系になっており、また、会社の姿勢、一緒に働く仲間が支援的であるために、安心して子供を産み、育てる環境があります。つまり、社員の働く立場を考えた経営を行っているのです。
一方、会社の業績・効率中心であれば、成果給、会社都合による転勤などでは、子供を産んで育てるにも、不安が残ることになります。
3
「いい会社」は、高齢者、女性、障がい者などの雇用に熱心であり、残業時間も少ないため雇用問題、労働問題が改善される
日本はこれから大幅な労働者不足を経験することになります。
今までのように週に5日フルタイムで働ける社員を中心とした構成では仕事が立ちゆかなくなるでしょう。
人を大切にする「いい会社」は高齢者、女性、障がい者など多様な人々の雇用に熱心であり、それぞれの人が最大限に能力を発揮できるようなサポートが充実しています。
そのため残業時間も少なく、すべての従業員に働きやすい職場になっています。
人は、働くことで幸せが得られる。
障がい者雇用をするかいなかで迷っている時、相談した導師が、日本理化学工業の大山泰弘会長にお話をした人間の究極の幸せは次の4つです。
・人に愛されること、
・人にほめられること、
・人の役に立つこと、
・人から必要とされること
そして、これらの幸せは働くことによって得られると言われて、障がい者雇用を始めることを決意しました。
そして、現在、81名の社員の内、重度も含めた知的障がい者60名が元気に働いています。
もし、障がい者が一生施設で暮らさなければならないとしたら、果たして幸せでしょうか?
障がい者に限りません。健常者も同じです。人は働くことによって、4つの幸せが得られるのです。
また、視覚障がい者が数多働くダイアローグインザダークで働く女性から、次のような言葉が聞かれました。
「生まれてから、ずっと、誰かにサポートをもらって、『ありがとう』と言い続ける人生でした。
しかし、ここで働くようになって、『ありがとう』を言われる人生になりました。こんなうれしいことはありません。」
しかし、働く場を提供している会社の中には、幸せを提供するどころか不幸にしてしまう会社があります。
無理なノルマ、過重労働により、社員に身体や精神に害を与えたりといったことでは、会社そのものの存在意義が問われかねません。