60pic_2_1438931818.jpg

常識1.マネジメント力は、PDC(プラン-ドゥー-チェック)サイクルを廻すこと!

執筆:藤井 正隆(ふじい まさたか) 公開:



マネジメントの仕事の特徴

カナダのマギル大学経営大学院のミンツバーグは『マネジャーの仕事』の中で5項目のマネジメントの仕事の特徴を示しました。


・マネジャーの仕事は、ルーチン的であらかじめ設定された仕事と予定外に発生する仕事とが入り混じっている。
・マネジャーはゼネラリストでもありスペシャリストでもある。
・マネジャーはあらゆる筋からの情報に頼っているが、口頭で伝達された情報を好む傾向にある。
・マネジャーの仕事は、瞬間的で、雑多で、断片的という特徴を持つ活動で構成されている。
・マネジャーの仕事はサイエンスというよりもアートであり、直感的プロセスや何が正しいかの「感覚」に依存している。
・マネジャーの仕事はどんどん複雑になってきている。

 

日本でも、神戸大学経営大学院三品和広教授は、30人の事業経営責任者のインタビューにより時間の使い方を調べたところ、日々の仕事に29%、月次単位の仕事に34%、年度単位の仕事に23%、年度を超える中長期の仕事に14%と、86%の時間は、短期的なこと使われていたことを報告し、さらに、都度の判断が求められているとしています。

 

つまり、基本と言われるPDC(プラン-ドゥー-チェック)のマネジメントサイクルは、実際には、回されておらず、部下からの相談他、断片的な仕事の処理に追われている実態を示しています。

そうした現実の中で、効果的効率的に仕事を行うマネジャーには、どのような特徴があるのでしょうか。

 

pdca 

 

効果的効率的に仕事を行うマネジャーの特徴

思考には、主として左脳で言葉を使って論理的に考える論理的思考(Logical Thinking)と、主として右脳で言葉を使わずにイメージで考えるイメージ思考(Image Thinking)とがあります。後者は心像思考とも言います。言語を必要としないということは、論理で考えるのではなくて、パターン、色、形、音、匂い、全体のつりあい、事象の移り変わり、その速度、全体から受ける漠然とした感触について、あるいはそれを手がかりとして考えることを意味します。

 

私は、小さな頃から、将棋が趣味で将棋道場にも通いました。今では、時間的な制約がありますので、将棋道場に通うことはありませんが、時々、オンラインゲームで気分転換をします。将棋のアマチュアの場合は、自分がこう指すと相手はこうくるだろう、といった読みを左脳で考えるといわれています。一方、プロ棋士は、右脳の視覚野が最も活発に働きます。つまり、パターン認識による画像処理を行うことで、マルチジョブにより手を読んでいるのです。昔、50歳で名人位を獲得した米長邦雄は、「一般的に将棋は、考えるゲームだと言われているが、実は、いかに、考えないかが重要なゲームである」と言っていましたが、まさに、イメージ思考で考えることを、逆説的な表現をしたのだと思います。

 

これは、将棋に限らないのではないでしょうか?


管理者のマネジメントに当てはめて考えてみると、ミンツバーグが言うことも理解できます。日々、起こる様々な事柄に対して、自社の業務の中で、PDCといった論理で考えるのではなく、今までの経験によるイメージ思考で、即座に判断しているのではないでしょうか?こうしたマネジャーの仕事の現実を考えると、マネジメントサイクルを学ぶことも重要ですが、それと同じくらい、まさに、イメージ思考力を鍛えることは、まさに、実態に合った能力を高めることになります。

 

 

イメージ思考力の高め方

では、マネジメントにおいて、イメージ思考力を高めるにはどうしたらいいでしょうか?
将棋の世界では、先人が吟味してきた定跡を覚え、さらに、全く同じようにいかない局面を繰り返し考え抜く中で、無駄な手を省略することができ、その局面での最善手を指す確率が高くなります。


マネジメントにおいても、ある程度、当てはまります。マネジャーは、日々、最善の判断をしようと考え抜いて思考錯誤する中で、「どのように判断したり、指示したりすることが、うまくいくか?」を体得することになります。まさに経験学習ですが、重要なことは、どのような経験をするかです。ただ漠然と、経験をするのではなく良質の経験をすることです。また、図解して考える習慣を付けるなど、概念化して考える力を磨くことは、瞬時の判断力を高めることになります。

 

もちろん、こうしたマネジャーの日常の現実は、PDCの重要性を全く否定することではありません。今まで書いてきたことと逆説的かもしれませんが、だからこそ、PDCが重要とも言えます。特に、短期的な対応に追われるからこそ、自社、自部門の中長期的な変革ビジョンを持って、まさに、PDCを意識することに意味があるからです。

 

今回のコラムで問題提起したいことは、マネジメント研修で、当り前に行われてきたPDCサイクル、部下育成、仕事の改善といったことに留まらず、さらに踏み込んで、イメージ思考力を高めること、対人感受性、対問題感受性、対状況感受性といった普遍的な能力を高めること、さらに、目まぐるしく変わる現状において、絶えず、問い直しをすることができる「自問力」を磨くこと等が大切なのではないかと思います。

参考:
勉強の仕方―頭がよくなる秘密 (ノン・ポシェット) 文庫 ?米長 邦雄 (著), 羽生 善治 (著)
駒澤大学経営学部 渡辺伊津子教授 2015年4月7日イマージョン内での勉強会配布資料


さらに知りたい方(コンサルタントに連絡をとる)