第1回 『成功キャリア』と『幸せキャリア』
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
「キャリア」という言葉には、職業に関係することだけでなく、その人の生き方や自己実現という要素も含んでいます。キャリアというと仕事に関することだけを考えがちですが、自分はどのように生きたいか、何を成し遂げたいかということまで意識することが幸せなキャリア形成につながります。自分自身が最も輝く幸せな人生を実現するというのも能力のひとつです。偶然に任せずに自ら切り開いていく力を身につけたいものですね。
中山さん(仮名)の場合
今回ご紹介するのは一流大学を出て大手企業に勤める中山さん(仮名)です。入社5年目でチームリーダーとして活躍していましたが、最近最年少の営業所長に抜擢されたようです。周りからみると非の打ち所のないキャリアを歩んでいるようにみえます。しかし、本人はどう感じているのでしょうか。インタビューしてみましょう。
「中山さん、昇進おめでとうございます。最年少の営業所長とはすごいですね」
「ありがとうございます。そう言うと聞こえはいいですが、営業所長といっても地方の営業所で、しかも会社の主力商品を扱う部門とは違う亜流の営業所ですから、格下ですよ。本社営業部のチームリーダーのほうがよっぽど上です。同期はみんな主力部門で活躍していますから、私は遅れていると思います」
「でもひとつの営業所を任されたわけですから会社から期待されているのではないですか」
「とんでもない。今の営業所は人材の質も低くて、本社なら2年目でできるようなことができない連中ばかりですよ。全然使えないです。こんなところに送り込まれて、はっきり言って左遷だとしか思えないですよ!!」
「中山さん、ちょっと落ち着いて。。まだお若いし、これからいくらでもがんばれるじゃないですか」
「こんなところでやる気も起きないし、私のキャリアはもう終わりです。どこで失敗してしまったんだろう。転職も考えますが、同期から負け犬だと思われたら嫌だし。。」
順風満帆に思われた中山さんでしたが、本人の感じ方は違うようです。これではとうてい幸せなキャリアとは言えませんね。
キャリアの成功と失敗
キャリアに成功や失敗があるのでしょうか。成功、失敗の基準を何にするか判断が難しいところですね。他人からうらやまれるようなキャリアを歩んでいたとしても、本人が満足していなければ成功とはいえませんし、キャリアとは一生続くものですから、ある時点を切り取って判断できるものでもありません。
私はキャリアには「成功」や「失敗」という言葉はそぐわないと思っています。「成功」ではなく、「満足」で「幸せ」なキャリアがあるのだと考えています。
そうした観点から、次回は中山さんのキャリアについて詳しく検証してみたいと思います。
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