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第2回 2つのシナリオ

執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:



前回は一流大学を出て大手企業に勤める中山さん(仮名)のインタビューを紹介しました。入社5年目で最年少の営業所長に抜擢されたのに、ちっとも嬉しそうではありませんでした。それどころか今回の昇進をマイナスにとらえているようでした。 

周りの反応は?

ここで中山さんの周りに人たちにも話を聞いてみたいと思います。
まずは中山さんの同期のみなさんに伺ってみます。

「みなさんは中山さんと同期ですが、今回中山さんが最年少の営業所長に選ばれたことをどう思いますか」

同期1「中山さんなら不思議はないですね。成績がそれほどいいわけではないけど、同期の中でも一番頑張っているし、後輩の面倒見もいいから、いい営業所長になるのではないでしょうか」

同期2「正直悔しいです。私のほうが中山さんより成績もいいし、上司からも信頼されていると思っていましたから。なぜ私でなく中山さんが選ばれたのかわかりません」

応援する同期、ライバル視する同期がいるようですが、いずれにしても今回の昇進を悪い意味にはとらえていないようです。

次に中山さんの上司で、今回の人事を決定した部長にお話を聞いてみましょう。

「部長、中山さんを最年少の営業所長に抜擢した理由はどのようなところにありますか」

「中山さんは社内外に人脈を作るのが得意で、周りに影響を与える力を持っています。今は営業成績がそれほど高いわけではありませんが、このような人脈のネットワークは後々に非常に役に立ってきます。今後全社的に影響力を及ぼそうと思ったら本社だけにいたのではだめです。そこで中山さんには更にネットワークを広げるために、あえて地方の営業所で経験を積んでもらおうと思っているのです」

「なるほど。そんな意図があったのですね。そのことを中山さんに伝えましたか」

「もちろんです。今回の人事を伝える面談で話しましたよ。でも途中から中山さんはなんか上の空で話をあまり聞いていないようだったな。嬉しくて舞い上がっていたのかな」

いやいや、反対ですよ。
中山さんはショックのあまり重要な話が耳に入っていなかったようですね。

実は中山さんは部長に高く評価されていたのです。
なのに異動の裏にある上司の想いや期待に気づかず、自分のキャリアに傷がついたと思い込んでしまったようです。

 

どのシナリオを選ぶかは自分次第

さて、これから中山さんはどうすればよいのでしょうか。

 

シナリオA
「自分のキャリアは負け犬だ」とすっかりやる気をなくしてしまい、赴任先の営業所でも部下に尊敬されず、営業所の成績も下がる一方。仕事に楽しみを見いだせず、幸せなキャリアとはほど遠い状態。期待していた部長にも見限られ、別の部門に降格。以下、負のスパイラル。。

シナリオB
一度は落ち込んだものの、悔しさをバネに一念発起し、がむしゃらに頑張る。その姿勢が部下にも伝わり、得意の影響力や人脈を最大限に活用し、赴任先の営業所を全国1位の成績に。仕事を心から楽しみ、満足することができている。更にその功績が認められ、もっと大きい部門のマネジャーに昇格。以下、とんとん拍子に。。

この2つのシナリオはちょっと極端ですが、どちらの未来を手に入れるかはこれからの中山さんの行動次第です。

いつも順調にいくに越したことはありませんが、ときにはつまずいたり失敗したり、思い通りにいかないこともあります。そんなときに、いかに早く気持ちを切り替えてやり直すことができるかが大切ですね。

地方に転勤になるという出来事は自分自身でコントロールできないものです。でもそれを自分のキャリアにとって良い経験にするか、悪い経験にするかは自分で選ぶことができます。中山さんも何年か後に振り返って、「今の自分があるのはあのとき地方に転勤になったおかげだな」と思える日が来るかもしれません。

 



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