第4回 キャリアをデザインすること
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
キャリアデザインとは
キャリアについて考えるとき、どんなに有能な人でも、またどれほど本人が努力したとしても、すべてが自分の希望通りにいくとは限りません。
むしろ組織の意向やビジネス環境によって左右されることが多いでしょう。転職で会社を選ぶことはできても、入社後の配属や業務内容に関しては思い通りにいかないこともあります。
また、社会環境の変化やプライベートでの出来事など、仕事以外でも予測できない要素がキャリアに影響します。
ということは、キャリアデザインなんて無駄なことなのでしょうか。
確かに、いつまでに何をするのか、将来どのようになるのかを細かく決めても、その通りに進むことは難しいかもしれません。でも大まかな方向性を決めておくことはできます。つまり、キャリアデザインで作成するのは計画書や設計図のようなものではなく、目指すべき目的地を示した地図のようなものになります。
目的地までの道のりは1つではありません。交通手段もルートも複数の選択肢があり、そのなかで自分に合った道のりを選べば良いのです。
環境は絶えず変化しますし、自分自身の成長や経験によって進みたい方向もたどり着きたい目的地も変わるでしょう。キャリアデザインは自分が進みたい方向を示す地図です。目的地が変わったら地図も修正しなければなりません。
働くステージが変わったとき、やりたいことが変わったとき、プライベートでの変化があったときなど、随時見直し、修正を加えていくことが大切です。
デザインしたキャリアを実現するために
そうして大まかな方向性が決まったら、それを意識しながら、少しずつ目標に近づく努力をしていきます。今の仕事や業務が目標とはかけ離れていると感じていても、自分でコントロールできる分野でできることがあるはずです。
たとえば、将来は「海外事業部で働きたい」という目標があったとします。しかし、海外事業部に配属されるかどうかは会社の判断にゆだねられています。自分がどれだけ努力しても達成できるかどうかはわかりません。
そういうときは、なぜそうしたいのか理由を考えてみることが有効です。なぜ海外事業部で働きたいのかを掘り下げて考えてみると、「海外という舞台で自分の力を試してみたい」「英語を使った仕事がしたい」「経験を積んで外資系企業に転職したい」など、理由があるのではないでしょうか。
それを満たすには必ずしも海外事業部でなくてもいいかもしれません。たとえば「自分の力を試したい」というのが理由であれば、海外でなくとも新市場や新規事業でも実現できるかもしれません。
このように、自分が進みたい目標や方向が決まったら、「なぜそれをしたいのか」と理由まで掘り下げて考えると、より核心をついた内容になります。本当に実現したい要素を洗い出すことでキャリアの可能性も広がります。
また、しっかり理由を考えておくことは、別の観点からも非常に重要です。もし途中で困難や壁にぶつかってしまったとしても、「なぜそれをしたいか」が明確になっていると、モチベーションを維持しやすく、挫折しにくくなります。
つまり、理由が明確になると、目標がぶれなくなります。現在いるところが目標からほど遠いとしても、今の自分にできることで、一歩でも目標に近づけることを見つけて続けていくことがキャリアを開くことにつながります。
挫折しそうになったら、もう一度「なぜそれをしたいのか」について考えると力がわいてくると思います。もしその理由が弱くなっているな、と感じたら、目標を見直すときなのかもしれません。
キャリアとは日々の行動の積み重ねです。楽しく柔軟にデザインして幸せなキャリアを目指しましょう。
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