第5回 「あきらめる」ことと「受け入れる」こと
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
あなたは「あきらめる」という言葉にどのような印象をお持ちでしょうか。
後ろ向きでネガティブなイメージでしょうか。
それとも静かに達観しているようなイメージでしょうか。
それでは「受け入れる」はどうでしょうか。
「あきらめる」よりは前向きなイメージでしょうか。
心地よい温かさを感じますか。それとも敗北感や悔しさを感じるでしょうか。
計画通りにいかないときは
前回のコラムでキャリアデザインについて取り上げました。
キャリアデザインは目指すべき目的地を示した地図のようなもので、そこに至る道には複数の選択肢があります。
そこに行きたい理由や本当に実現したい要素を明確にすることでキャリアの可能性が広がると書きました。
それでも・・・
壁にぶつかってしまうときはあるでしょう。
もし自分の希望する部署や業務につくことができなかったら。
もし自分が思い描くキャリアプラン通りに進むことができなかったら。
もし自分のキャリアに行き詰まりを感じてしまったら。
そんなときはどうすれば良いのでしょうか。
「はい、あきらめましょう」
と言うと驚かれるでしょうか。
あきらめるという言葉に抵抗があるのであれば、「手放す」と言えばどうでしょう。
私のキャリアはこうでなければならない
計画通りでなければ成功したキャリアとはいえない
そのような考えを手放してみます。
次に現在の状況を受け入れてみます。
受け入れると向上心がなくなってしまうのではないかと言う人がいますが、現状を受け入れることと、さらに良くなりたいという気持ちは相反するものではありません。
むしろ、受け入れることで前向きな行動力が生まれます。
不満や悔しさをバネにがんばれるという人もいますが、多くの人は「こんなはずじゃなかった」「なんで私が」といったネガティブな気持ちにとらわれて、次の行動をとることができなくなってしまうのではないでしょうか。
だからいったん「あきらめ」て「手放す」ことから始める必要があるのです。
「絶対嫌だ」「もう終わりだ」という絶望的な気持ちになったときこそチャンスです。
それ以上落ち込むことはないのですから、後は上がるしかありません。
ま、いっか
こんなもんでしょ
なるようになる
そうつぶやくと心が軽くなりませんか。
今の自分にできることを見つける
前回も書きましたが、そもそもキャリアは自分の意向だけで決まるものではありません。
時として、不本意な方向に進まざるを得ないときもあります。
しかしその経験が後になって、思ってもみない形で役立つことも多いのです。
そして初めに自分で考えていたのとは違うルートで目的地に到達した、ということも起こります。
そのために必要なのは、目的地を見失わず、そこに向かって一歩でも近づけるような何かを見つけて続けてくこと。
あきらめるという言葉をネガティブにとらえるのではなく、積極的に前向きにあきらめるというスキルを身につけることも大切ですね。
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