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第1回 接客の類型から考える販売員の能力開発(1)

執筆:岩瀬 敦智(いわせ あつとも) 公開:



1.高い売上高をあげる力量を持った販売員の接客には、共通の要素が存在する

私が、販売員の能力開発を研究しはじめた理由は、自らの実務経験上の気づきに起因します。私は、8年間にわたり大手百貨店に勤務し、婦人服・婦人衣料雑貨売場、紳士服・紳士衣料雑貨売場、宝飾品売場を担当しました。

 

各売場で、エリア・マネジメント、ショップ運営、販売及び販売員育成業務に携わりました。百貨店の売場運営では、特定エリアの複数のテナントを担当します。そこで、どの担当エリアでも共通の傾向があることに気づきました。

 

「立地、商品内容にあまり差がない時、売上高は販売員の力量によって変動する」「消費者を惹きつけ、高い売上高をあげる力量を持った販売員の接客には、共通の要素が存在する」ということです。

 

一方で、多くのテナントでは、販売員の接客が個人の属性に委ねられていることが多々あります。勘やセンスが良い販売員は売上高を上げられるが、そうではない販売員は売上高を上げることができない状態です。

 

そこで、上記の接客の共通要素を抽出し、効果的、効率的な販売手法として体系的にレクチャーすることができれば、より多くの販売員が売上高を高めるスキルを身に付けられるのではないか、と考えるに至りました。

 

2.「長期的か短期的か」「能動的か受動的か」

百貨店の現場で、多数の販売員の接客を観察していると、以下の2軸が見えてきました。

 

1軸目は、「長期的から短期的か」です。

お客様と長い目で見て接し、お店やスタッフのファンになってもらおうとする長期的な視点での接客と、目の前のお客様に商品を買ってもらおうとする短期的な視点での接客です。

 

2軸目は、「能動的か受動的か」です。

自分から率先してお客様へのアプローチを実施する能動的な接客と、お客様から聞かれたことや依頼されたことに答える受動的な接客です。

 

この2軸を掛け合わせ、マトリックスにすると、接客を4つの類型に整理することができます。

各類型の概要は下記のとおりです。

(1)マーケティング型接客

マーケティング型接客とは、長期的かつ能動的な接客です。能動的に様々な対策を講じ、お客様に長期的にファンになってもらうよう行動します。

(2)コミュニケーション型接客

 コミュニケーション型接客は、長期的かつ受動的な接客です。お客様と長いお付き合いをする視点をもちながら、双方向のコミュニケーションに主眼を置いて行動します。

(3)セリング型接客

セリング型接客とは、短期的かつ能動的な接客です。眼の前のお客様に対して売るための対策を講じ、積極的にアプローチします。

(4)レスポンス型接客

 レスポンス型接客とは、短期的かつ受動的な接客です。お客様と長いお付き合いをするという視点ではなく、お客様に対して、迅速かつ丁寧に反応することに主眼を置いた接客です。

 

3.接客シーンに合わせて4つのパターンを使い分けている

 先に述べた「消費者を惹きつけ、高い売上高をあげる力量を持った販売員の接客」における「共通要素」は、整理をしていくと多くの範囲、多くの階層に渡りますが、大きな共通要素として、「高い売上高をあげる力量を持った販売員は、接客シーンに合わせて4つのパターンを使い分けている」と考えられます。

 次回は、その点について、接客の4類型を掘り下げながら考察します。

 



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