第7回 キャリアの満足度を高める「キャリア・アンカー」
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
前回はキャリアにおいて偶然の出来事をチャンスに変えるために必要な姿勢について書きました。今回は自分のキャリアをさらに満足できるものにするために、キャリア・アンカーについてご紹介します。
キャリア・アンカーとは
キャリア・アンカーとは、個人がものごとを選択する際に、よりどころとする欲求、動機、価値観、能力などを統合したものです。どうしても犠牲にしたくないもの、本当の自分を象徴するようなものといえるでしょう。
アンカーとは船を停留させる錨(いかり)のことです。どんなに波が高くても、しっかりと錨を降ろしていれば船はその場にとどまっていられます。このように、その人のキャリアにとってぶれない核となるものです。
私たちは過去の経験や、周りの人からのフィードバックなどを通して、キャリアを決定するための基盤である自己イメージを作り上げていきます。キャリアに関する自己イメージには次の3つの側面があります。
(1)才能と能力
自分の才能、スキル、得意なことは何か。強み、弱みは何か。
(2)動機と欲求
自分の動機、欲求、人生で成し遂げたいことは何か。望むこと、望まないことは何か。
(3)態度と価値
人生やキャリアに関してどのように向き合っているか。自分の価値観は何か。
これらの自己イメージが、キャリア・アンカーを決定します。キャリア・アンカーは次の8つの種類があります。
8つのキャリア・アンカー
(1)専門・職能別コンピタンス
自分が得意としている専門分野で活躍し、高い専門能力を発揮することにやりがいを感じます。
(2)全般管理コンピタンス
経営管理そのものに関心をもち、自分の権限や責任においてリーダーシップを発揮し、集団を統率することに満足を覚えます。
(3)自律・独立
組織の規則や手順にしばられず、自分のやり方、ペースで仕事をすることを何よりも優先します。
(4)保障・安定
雇用や給料が保障され、安定している環境を求めます。安定していて安心できる環境であれば、進んで組織の指示に従います。
(5)起業家的創造性
新しいものを創り出すことに対する強い欲求があります。がむしゃらに夢を追いかけ、自分自身の力によって何かを成し遂げたいという熱い思いを持ち続けています。
(6)奉仕・社会貢献
自分の能力を発揮することよりも、他者を援助することに喜びを感じます。自分が感心を持っている分野で社会に貢献できることを望みます。
(7)純粋な挑戦
困難な問題に取り組むことにやりがいを感じます。多くの人が挑戦を求めていますが、彼らにとっては挑戦することこそが人生の大きなテーマです。
(8)生活様式
生活様式全体を調和されることを強く望みます。組織のために働くことには前向きですが、自分の生活様式に合わせた働き方ができるという条件を求めます。
自分のキャリア・アンカーを知る
ほとんどの人はひとつのキャリア・アンカーが特定されるといわれています。複数に当てはまると感じることもあるかもしれませんが、どちらか迷ったときは、キャリア上でどうしてもどちらかを捨てないといけないときはどうするかと考えてみると特定に役立つでしょう。
ただし、キャリア・アンカーに優先順位をつけるのに十分な経験をしていない場合は、はっきりと特定できないかもしれません。
仕事をする中で、どのような選択をしてきたか、どのような時に喜びを感じたか、何が得意か苦手かなど、自分に関する情報がキャリア・アンカーを形作ります。ですので、仕事の経験が浅いうちは本当のキャリア・アンカーに気づかないこともあります。
偶然をチャンスに変えて、思いもよらないキャリアを進むことで、本当のキャリア・アンカーがわかってくるかもしれませんね。
自分のキャリア・アンカーがわかれば、今の自分の仕事や働き方はキャリア・アンカーに合致しているかどうかの判断基準になります。もし合致していなければ、あまりやりがいを感じられなかったり、ストレスを感じていたりするかもしれません。人は自分の価値観に合った仕事をしているときにやりがいや生きがいを感じます。自分のキャリア・アンカーを知って、それに合う働き方をすることがキャリアの満足度を高めます。
キャリア・アンカーの簡易診断ツールもありますので、興味のある方は下のボタンからお問い合わせください。
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