第3回 接客の類型から考える販売員の能力開発(3)
執筆:岩瀬 敦智(いわせ あつとも) 公開:
前々回のコラムで、百貨店の販売員が実践する接客には、大きく分けて(1)マーケティング型接客、(2)コミュニケーション型接客、(3)セリング型接客、(4)レスポンス型接客があることを提起しました。前回は、マーケティング型接客の概要について説明しました。今回は、「コミュニケーション型接客」の概要について取り上げます。
1.クレームが少ない販売員が実施している「コミュニケーション型接客」
前回、テナントのトップ販売員は、主に「マーケティング型接客」を実施しているとお伝えしました。今回のコミュニケーション型接客は、言うならばクレームが少ない販売員が実施しているテクニックといえます。
お客様とのコミュニケーションを第一に考えるため、お客様に不快な印象を与えずに会話しやすくなります。お客様と仲良くなることで、何度も足を運んでいただき、売上アップに繋げようとする手法です。
この手法は、トップ販売員に限らず実践している販売員が一定数いました。
2.「仲が良い販売員がいる」と、来店頻度と購入頻度が高まりやすい
2008年に20代~40代の働く女性303人に対して、「良く行くアパレルショップに仲の良い特定の販売員はいるか?」というアンケートをとりました。
その上で、(1)「仲の良い特定の販売員の有無」と「来店頻度」、(2)「仲の良い特定の販売員の有無」と「購入頻度」の2点について、χ二乗検定という統計学の分析を行いました。統計の内容は横に置き、結論だけをお話ししますと、仲の良い特定の販売員がいると答えた女性の方が、いないと答えた人よりも、来店頻度、購入頻度が高い傾向があるという結果が出ました。
この時の統計分析から言えそうなことは、「お客様と仲良くなることで、来店頻度や購入頻度を高めることができそうだ」ということです。したがって、お客様と仲良くなるために、コミュニケーションを図ることは、接客で売上アップを高めるという観点で見ると、理に適っているといえます。
3.コミュニケーション型接客のポイントは、「世間話」。
それでは、仲の良い特定の販売員と一体どのような会話をしたのか?これも同じアンケートの自由回答欄に記入してもらいました。
仲の良い特定の販売員がいる場合の会話と、いない場合の会話を、それぞれテキストマイニングという手法を使って、良く出てきたキーワードを分析しました。それが、以下の表です。
【購入した際の販売員との会話内容における有意な構成要素】
©Atsutomo Iwase
「仲の良い特定の販売員がいる」の下のキーワードに注目してください。世間話、地元、彼氏、靴、仕事という言葉が並びます。どうも商品の話ではなく、地元や彼氏、履いている靴、仕事の話…ひっくるめて世間話で盛り上がっているようです。
この点から、コミュニケーション型接客においては、世間話が発生しやすい応対や環境を整えることが極めて重要になるといえます。
ちなみに、この「世間話」は前回お話ししたマーケティング型接客の7つの要素の中の1つです。コミュニケーション型接客の延長線上に、マーケティング型接客があるといえます。
4.今回の要点
今回の要点をまとめておきます。
(1)各テナントで相対的にクレームが少ない販売員は、コミュニケーション型接客を実施している。
(2)コミュニケーションを図ってお客様と仲が良くなることで、来店頻度、購入頻度がアップする可能性が高い。。
(3)コミュニケーション型接客のポイントは、世間話が発生しやすい応対や環境を整えることが重要である。
コミュニケーション型接客については、マーケティング型接客を詳しく説明する過程で、内容を深めていきたいと思います。
次回は、セリング型接客の概要について見ていきましょう。
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