第8回 キャリア・アンカーを理解してキャリアの幸せ度を高める
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
前回は個人がキャリアを選択、形成する上で大切なキャリア・アンカーについて書きました。ほとんどの人が自分にとって譲れない大切な価値観として、8つのキャリア・アンカーのいずれかを持っているというお話でした。今回はキャリアの幸せ度を高めるために、どのようにキャリア・アンカーを活用すればよいかをお話しします。
キャリア・アンカーと仕事は合っていますか?
前回キャリア・アンカーは1つに特定されると書きましたが、多くの人は3つくらい当てはまると感じるものがあるようです。厳密に優先順位を探っていくと1つに特定されるかもしれませんが、必ず1つに絞らないといけないわけではありませんので、上位3つくらいを自分のキャリア・アンカーとして考えておけば良いでしょう。
そのときの立場や周りの状況で変動することもあると思います。
さて、自分のキャリア・アンカーがわかったとして、今はそれに合った仕事ができているでしょうか。ぴったり合った仕事をしている人もいれば、全く違った仕事をしている人もいるでしょう。
今している仕事がご自身のキャリア・アンカーに合致している人は幸せなキャリアを歩めているでしょう。反対に全く合致していない人はストレスの多い日々を送っているかもしれません。
たとえば「純粋な挑戦」というキャリア・アンカーを持っている人が、毎日同じことの繰り返しの単調な仕事をしていたらどうでしょう。難しいことに挑戦したいという欲求が満たされず、不満に思っているかもしれません。
また、「全般管理コンピタンス」を持った人がまったく権限を与えられず、指示されるだけの仕事をしていたらどうでしょうか。自分がリーダーシップを発揮して周りを率いていくことができず、欲求不満を感じているでしょう。
そのような状態が続くと、ストレスがたまり、どんどんやる気がなくなってしまうと想像できます。
しかし、今の仕事が自分のキャリア・アンカーからかけ離れていることに気づいたとしても、慌てて転職するのは待ってください。異動や転職をしても、新しい仕事が自分のキャリア・アンカーに合致するという保証はありません。
今の仕事の中で、自分のキャリア・アンカーに合う仕事を見つけて増やしていけば良いのです。
嫌いな仕事を分析する
私たちが日々行う仕事には、さまざまな内容、種類があります。営業職、経理職と一言でいっても、企業によって担当する業務や範囲はまったく違います。一度自分の仕事を振り返って書き出してみてください。出勤してから退社するまでの1日には実に多くの業務を行っているのではないでしょうか。そのようなさまざまな業務の中には得意なこと、不得意なこと、好きなこと、嫌いなことがあるでしょう。
そういった業務の好き嫌いに気づいたときはチャンスです。
なぜその業務が好きか、嫌いかを掘り下げて考えてみます。
→なぜ嫌い?
顧客情報の入力が単調で退屈。他のファイルや顧客のホームページからデータをコピーするのが面倒。
→全部の作業が嫌い?
データを入力した後の数値の集計や資料を見やすいようにレイアウトするのは好き。
それでは好きな作業に焦点を当てて、嫌いな入力はそのための準備だと割り切ってしまいましょう。
また、あなたとは反対に、単調なデータ入力が得意で、集計は好きではないという同僚がいるかもしれません。
あなたが嫌いな仕事を大好きだと言う人もいるのです。
もしそんな人が見つかったら、データ集計を手伝ってあげましょう。お礼にあなたのデータ入力を引き受けてくれるかもしれません。
→なぜ?
そもそも人前で話すのが苦手。とちると後で上司からネチネチ言われるし。。
→全部の作業が嫌い?
プレゼンのための資料やデータを作成するのは好き。どうやったら顧客にわかりやすく伝えられるか工夫したりするのは楽しい。
それでは好きで楽しい作業にしっかりとエネルギーを注ぎましょう。わかりやすいプレゼン資料ができれば、多少話すのが苦手でもきちんと伝わるはず。上司や同僚のデータ作成を手伝ってあげるのもいいですね。プレゼンで話すコツを教えてもらえるかもしれせん。
仕事ですから、嫌いなことも不得意なこともやらなければならないときもあるでしょう。でも、やり方を工夫したり、同僚と協力しあったりすることで、お互いのストレスが減り、楽しく仕事ができるようになるのではないでしょうか。
→ コラム一覧に戻る