第9回 価値観を大切にしていますか
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
前回はキャリア・アンカーを理解し、キャリアの幸せ度を高めるために活用する方法について書きました。自分のキャリア・アンカーと仕事が合っているかは大切ですが、合っていないなら今の仕事のままでどのように工夫すればよいかを知ることはもっと重要です。今回はさらに、職場を変えずに仕事の幸せ度を高める方法をご紹介します。
自分の価値観を大切にしていますか
価値観とは、ものの見方や判断、優先順位づけの基準となるものです。人はものごとの価値や重要度、そこにどんな意味づけをするかなどを各人の価値観で判断します。行動する際や何かを決断するときにも価値観が影響しています。
しかし、行動や決断に影響をおよぼすのは価値観だけではありません。実際には周りからの圧力や社会通念が影響することがあります。特に職場内での暗黙のルールやピアプレッシャーと呼ばれる仲間内の圧力が行動を決めることも多いでしょう。
たとえば次のようなケースはどうでしょうか。
今後の土曜日は子供の運動会があり、あなたは必ず行くと約束をしました。しかしある日上司に呼び出され、緊急対応が入ったので次の土曜日に出社してくれないかと頼まれました。さあ、あなたはどうしますか。
もしあなたが仕事よりも家族が大事だという価値観を持っていたとしたら、子供との約束は何よりも大切にしなくてはいけないものです。当然ここでの判断は「休日出勤を断って約束通り運動会に行く」というものになるでしょう。しかし実際には上司の依頼を断れずに子供との約束を破ってしまう人も多いのではないでしょうか。
こうした価値観と違う行動を選択することは、私たちが思っている以上にストレスとなるものです。自分ではそれほどではないと感じているかもしれませんが、私たちの活き活きとした感情や、喜びや悲しみを感じる感受性をむしばんでしまいます。
また、ずっと周りに合わせた行動をとり続けていると、ひどい場合は自分の価値観がわからなくなってしまうこともあります。そのようなことにならないように、たまには「自分にとって何が大切か」「自分は何を守りたいか」について考えてみるといいですね。
周りの期待に応えることも大切ですが、本当に自分が大事にしたいことを優先する勇気も必要です。
自分の価値観を知る
では、自分がどのような価値観を持っているのか、どうすればわかるのでしょうか。それには様々な方法がありますが、手軽にできるのがいくつかの質問に答える心理テストや性格診断テストです。インターネット上には無料でできるものもありますので、試してみてください。
もう少し掘り下げて、ワークシートに記入したり、グループで話し合ったりする方法もあります。カウンセリングを受けるというのも有効です。
自分の価値観がわかったら、現在それらを大切にできているかどうかを確認してみます。もしできていないとすれば、そのことで人生にどのような影響が出ているかも考えてみてください。今まで気づいていなかったストレスの原因が見えてくるかもしれません。
大切にしたいことが明確になったら、少しずつでも仕事や生活の中に取り入れてみませんか。
価値観に良い悪いはありません。それは「あなたらしさ」そのものです。押さえつけると仕事や人生に悪い影響をおよぼします。活き活きとした幸せなキャリアを歩むためには自分を大切にすることがポイントですね。
価値観とモチベーション
価値観は仕事のモチベーションにも影響します。企業は社員のモチベーションを高めようと、表彰制度やボーナス、研修など様々な取り組みをしますが、同じ条件でもやる気になる人とならない人がいるのではないでしょうか。それは人によってモチベーションの源泉が異なるからです。価値観だけでなく、パーソナリティタイプやこれまでの経験などによって、どのようなことでモチベーションが上がるのかが違います。
自分がどのようなときにモチベーションが上がるのか、下がるのかを知っておくと、いろいろなところで役立ちます。仕事を進める上ではやる気のでないことでも取り組んでいかなければなりません。そのときにどうすれば少しでもやる気を出せるか、どんなふうにやり方や視点を変えればやる気のでる仕事にできるかのヒントになります。
価値観やモチベーションの源泉など、自分を理解することは大きな強みになります。忙しい毎日だとは思いますが、たまには自分と向き合う時間も作ってみてくださいね!
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