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第6回 マーケティング型接客のエッセンス(1)

執筆:岩瀬 敦智(いわせ あつとも) 公開:



今回から、「マーケティング型接客のエッセンス」と題して、第3回目のコラムで取り上げたマーケティング型接客について掘り下げて説明します。

 

そもそもマーケティング型接客とは、マーケティング3.0の考え方にもとづき、お客様と関係性を築きながら、接客の中で価値を提供していく手法です。

マーケティング型接客は、お客様を観察することからはじまります。

 

1.アパレル販売員Aさんのケース

 

Aさんは、あるアパレルブランドで、常に売上高トップ10に入る販売員です。Aさんがお客様を接客している様子を見ていると、面白いことがわかりました。

 

皆さんも試着しながら洋服を選んでいると、販売員から別の洋服をお奨めされた経験があるのではないでしょうか。これは、販売員がお客様に別の選択肢もお示しすることで、購入を促す手法です。

 

Aさんも、試着をしているお客様に別の商品をお奨めし、お客様の選択肢を増やしています。ある日のやりとりは以下のとおりです。

 

 

 

Aさん「お客様、こちらのようなワンピースもございます」

お客様「あら、よさそうね。着てみようかしら」

Aさん「ぜひ、ご試着ください」

 

(試着後)

お客様「やっぱり、いいわね。これをいただこうかしら。」

 

 

 Aさんは、上記のように、たくさんのお客様に、商品をお奨めしています。そして、そのほとんどで、Aさんがお奨めした商品は、お客様から興味を示され、購入されていくのです。

 

 

2. 接客における観察の重要ポイント!「仮説をたてる」

 

なぜ、販売員Aさんは、試着しているお客様に的確に好みの商品をお奨めできるのでしょうか。その大きな理由として、「観察をしていること」があげられます。

 

接客における観察の役割は、ずばり、お客様の「好み」の仮説をたてることです。デジタル大辞典によると、仮説とは、「ある現象を合理的に説明するため、仮に立てる説」です。つまり、平たくいうと、「このお客さまはこういう好みがありそうだ」「こういうものが好きに違いない」と仮定することです。

 

 

3. Aさんが観察しているポイント

 

 Aさんは、必ず、お客さまの髪型、服装、小物、靴をチェックします(これを観察4点セットといいます)。表情や歩き方が、その時の気分や状況を反映しやすいのに対して、髪型、服装、小物、靴は、その人の持つ普遍的な好みを映し出しやすいといわれます。

 

Aさんは、まさに、この4点セットから、スピーディかつ的確に仮説をたてています。さらに、その仮説の立て方が、スピーディかつ正確であり、その結果、好みを的確に推奨できているのです。

 

 Aさんは主に以下の3つの切り口で仮説をたてています。

 

一つ目は、服装の傾向。コーディネートを見ることで、その人がコンサバ系なのか、トラッド系なのか、など服装の傾向がつかめます。

 

 二つ目は、職業です。平日などの会社帰りの場合、着用している洋服からある程度職業を絞り込むことが可能です。たとえば、プレーンなスーツで、歩きやすいパンフスを履いている人は、学校の先生や営業職が多いなど。職業が絞り込めれば、おのずと着用する洋服の傾向も見えてきます。

 

 三つ目は、身に付けているカラーです。色が視覚に及ぼす影響は大きく、人は普段着なれない色の洋服を着て鏡を見ると、「うーん・・・なんか、おかしいな」という違和感を覚えます。この違和感が、「似合ってない」という判断に結びつくことが多いようです。裏を返すと、お客様は、自分が似合っていると思うカラーを身に付けている可能性が高く、それとかけ離れた色をお奨めしてしまうと、拒絶される可能性が高いといえます。

 

 以上のように、Aさんは、観察する時に「傾向」「職業」「カラー」の仮説をたてるのです。

 

そして、お客様が試着をしている間に、それに見合った商品を店内から見繕ってお奨めすることで、かなりの高確率でお客様の支持を得ることができるのです。



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