第12回 キャリアの扉をひらく鍵
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
前回は外的キャリアと内的キャリアについて書きました。やりがいや満足のためには内的キャリアを充実させることが大切だというお話でした。内的キャリアを充実させ、やりがいを持って働くことで、いったんはあきらめた外的キャリアをも手に入れることができた事例をご紹介しましたが、今回はその事例について詳しく解説していきます。
キャリアを広げるポイント
前回ご紹介した山本さんの事例には重要なポイントがいくつかあります。
(1)営業に異動になったときにやめずに前向きに取り組んだ
(2)それまでの経験が役立ち、他の営業と差別化ができた
(3)当初思っていたこととは違う形で研究開発にたずさわることになった
(4)そのような役割を担うとは自分でも思ってもいなかった
(5)非常にやりがいを感じ、満足度の高いキャリアを実現している
山本さんは一度は転職も考えますが、思い直して新しい仕事を受け入れ、前向きに取り組みました。そして会社の期待に応え、顧客の期待に応え、同僚の営業の期待に応えているうちに、自分の能力を活かし、自分でも思ってみなかった仕事をするようになりました。
そしてそれは当初考えていたものよりもやりがいのある仕事でした。
自分で自分のキャリアの幅を狭めずに、柔軟に与えられた役割を受け入れた結果得られたものです。
組織の中にいると、自分の好きな仕事ばかりできるとは限らないですね。
ときにはやりたくない仕事もあるでしょうし、苦手な仕事、ストレスの多い仕事もあるでしょう。しかしそんなときにも目の前の仕事に集中し、没頭することが新たなキャリアの扉をひらきます。
やりたくないと思っていたけれど、意外と面白いかもしれませんし、自分でも思いがけない発見があるかもしれません。
経験の力
山本さんのコメントの中に「私が本当にやりたかったのは、顧客の声をよく聞いて商品開発に活かすことです」という言葉がありました。
しかし、異動になる前の山本さんは、研究部門で商品開発をすることが自分のやりたいことだと思っていました。営業への異動で自分のキャリアを絶たれたように感じていました。
そのときは営業としてお客様と直接関わる経験がなかったので、その仕事の意義に気づいていなかったのでしょう。「営業の仕事は大変そうだな」という印象があったかもしれません。しかし、実際に自分で経験してみて、大変さの中にも楽しさややりがいがあることを知り、その経験を活かしてやりたかった仕事に携わることができるようになりました。
そのように、自分が本当にやりたかったことに気づくことができたのも、未知のことにチャレンジし、実際に経験してみたからではないでしょうか。
どのような経験でも、それが自分の成長につながると思うと、チャンスと捉えることができます。苦手なこと、難しいことこそが人を成長させます。食わず嫌いをせずに、夢中で取り組むことで仕事の面白さを感じるようになることもあります。
自分の好きなこと、やりたいことだけをやっていたのでは成長のスピードも遅くなってしまうでしょう。
山本さんのように、与えられた役割をまずは受け入れ、前向きに取り組むことから始めてみてはどうでしょうか。
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