第13回 意思決定のプロセス
執筆:青木 仁美(あおき ひとみ) 公開:
前回は自分にとってマイナスだと思われる出来事が、その後のキャリアにとって大きな転機になった事例について書きました。あきらめずに前向きに取り組んだことで、自分が本当にやりたかった仕事ができるようになったというお話でした。今回は、キャリアの選択にはつきものである意思決定についてお話しします。
前回ご紹介した事例でも、営業職に異動になったときに辞めるかどうか迷った場面がありました。「辞めるか残るか」、「どちらの企業を選ぶか」など、キャリアの選択において、決断を下さなければならない場面に遭遇することがあります。
あなたは今までに、キャリアの選択で迷ったことがあるでしょうか。そのときにどうやって決断したのでしょうか。印象に残っている決断があれば少し思い出してみてください。
私たちはものごとを決めるとき、できる限りの情報を集め、それぞれのメリットとデメリットを比べ、冷静に合理的に決定しているのでしょうか。それとも、直感や衝動で決定するのでしょうか。もちろんほとんどの人はどちらか二者択一というわけではなく、時と場合によって使い分けていると思います。
最近の研究では、人間には非常に不合理な選択をする側面があるということがわかってきています。頭で論理的にわかっていても、感情や感覚で決定することもあるようです。
いずれにしても、理性と感情を切り離すのではなく、両方で補い合って意思決定したほうが、後悔することが少ないと言われています。
意思決定のプロセス
通常、私たちが意思決定をするときには、次のようなステップがあります。
1.意思決定が必要だと感じる段階
自分の中から欲求や希望が出てくる場合もありますし、外部からのプレッシャーで意思決定の必要性を感じることもありますが、何か意思決定をしないといけないと感じる段階です。
2.自分を見つめる段階
その意思決定において、自分はどうしたいのか、本当に必要があるのかと考える段階です。
3.情報収集する段階
どのような選択肢があるかを探したり、それぞれの選択肢について情報を集めたりする段階です。自分自身に関する情報収集も含みます。
4.意思決定に向けて検討する段階
集めた情報を元に、メリット、デメリット等も考え、選択肢を絞り込む段階です。
5.意思決定し実行する段階
4で絞り込んだ選択肢から、実際に意思決定し行動に移す段階です。
6.振り返る段階
意思決定について再評価し、適切であったか、変更の必要があるか、希望の結果が出たかなどを振り返る段階です。ここで新たな意思決定が必要になる場合もあります。
私たちは普段何かを決めるときにこのようなプロセスを意識して行うわけではありません。しかし、意思決定がうまくいかないなと感じるときに、このようなプロセスを知っておくことが役に立ちます。
プロセスを分解することで、どこで問題が起きているかがわかりやすくなるからです。
たとえば、後悔のない意思決定をするために、3の段階ではできるだけ多くの情報を集めたいと思うでしょう。しかし、状況は日々変わりますし、情報収集に終わりはありません。
完全にすべての情報を集めることなどできないのですから、どこかの時点で4の段階に移る必要があります。
また、4で選択肢を絞り込んでいくのだけれど、なかなか5の決断に移れないこともあるかもしれません。
このように、ときどき自分の意思決定のプロセスを振り返り、どの段階で問題が起きているかを確認してみると、より良い決断のための助けになると思います。
「早く決めないと」とプレッシャーがかかる状態にあるときは、どうしても視野が狭まってしまいます。もんもんと悩むばかりでは答えがでないでしょう。
そういうときは、一度すべてを忘れ、映画を観たり、友人と食事をしたり、自然の中に出かけたりすると、脳がリフレッシュされ、新たな視点で考えられるようになるのではないでしょうか。
「2つの選択肢のうちどちらがいいか、どれだけ悩んでも迷って決められないとしたら、どちらを選んだとしても後悔はしない」
私がカウンセリングを教わった師匠の言葉です。しっかりと考えて自ら選択した道であれば、結果がどうなっても後悔しないということのようです。
未来がどうなるかは誰にもわかりません。確信がもてるまで待っていてはいつまでたっても決めることができません。
思い切って一歩踏み出し、決断をすることが大切だと教えられました。
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